■検証49京都・奈良仏教界をモデルに「戒壇の大本尊」を偽作した大石寺9世日有3

 

□法隆寺本尊、延暦寺本尊等をモデルに大石寺9世日有が偽作した大石寺「戒壇大本尊」

 

大石寺9世日有は、何をモデルにして「戒壇の大本尊」なる板本尊を偽作したのか。

 

□板位牌・寺位牌

 

13世紀のころ、栄西、道元が中国から日本に伝えた禅宗とともに、中国から日本に伝来した位牌。その位牌の中でも、特に板位牌。寺位牌。日本曹洞宗の開祖・道元禅師が開山した曹洞宗大本山永平寺の寺位牌が、日蓮正宗や富士門流寺院で見かける板曼荼羅本尊に実によく似ている。もちろん永平寺にあるのは寺位牌だから、日蓮の曼荼羅は図顕されていないが、寺位牌の形そのものが、富士門流の板本尊に似ているのである。さらに永平寺には位牌堂があり、ここにも寺位牌が祀られている他、おびただしい数の板位牌が収蔵されている。永平寺の位牌堂は「祠堂殿」とよばれている。祠堂殿とは全国各地の末寺寺院による壇信徒の入牌、納骨をする堂宇。特別志納の人による全国各地の位牌が祀られ、追善供養の法要も営まれる。祠堂殿の中には、二体の寺位牌が祀られていて、これは法堂の寺位牌とほぼ同じ。巨大な寺位牌の形は、日蓮正宗、富士門流寺院の板本尊によく似ている。かつては曹洞宗大本山だった総持寺祖院の法堂にも、位牌を祀る位牌堂がある。そこには数多くの位牌が祀られている。ここで一番大きな位牌は、特別に祀られている総持寺歴代貫首の位牌。歴代貫首の板位牌は、ひときわ大きい。形としては、まさに日蓮正宗や冨士門流の板曼荼羅本尊にそっくりである。

永平寺64位牌堂板位牌


永平寺66位牌堂板位牌
 

(曹洞宗大本山永平寺祠堂殿に祀られている板位牌)

 

□秘仏

 

■延暦寺 根本中堂本尊 薬師如来立像 

延暦寺の根本中堂(国宝)は、伝教大師最澄が建立した一乗止観院の後身。中央の厨子には最澄自作の伝承がある秘仏・薬師如来立像を祀っているが秘仏になっていて、前に「前立」本尊の薬師如来像が祀られている。日蓮自作を詐称する「本門戒壇の大御本尊」の最大のモデルは、伝教大師最澄が自作したと伝承されている根本中堂本尊である薬師如来立像である。

■園城寺 本尊 弥勒菩薩像 

金堂本尊の弥勒菩薩像(弥勒如来とも)は、天智天皇の念持仏と伝え、唐からの請来像ともいうが、絶対の秘仏で公開されたことがなく、写真も存在しない。

 

 

■園城寺 智証大師(円珍)坐像(国宝)  「中尊大師」、「御骨大師」の2体あり。中尊大師は1029日の祥忌法要で開扉されるが、御骨大師は開扉なし。

■園城寺 不動明王像(黄不動、絵画、国宝)  厳重な秘仏として知られ、寺では書籍等への写真掲載を厳しく制限している。特別展などで数回公開されたことがある。

■法隆寺 夢殿本尊 救世観音 

聖徳太子の等身像とされる。約数百年の長年秘仏であり、白布に包まれていた像で、明治初期に岡倉天心とフェノロサが初めて白布を取り、「発見」した像とされている。現在も春・秋の一定期間しか開扉されない秘仏である。これらの「秘仏」をモデルにして、大石寺9世日有は自ら偽作した「戒壇の大本尊」を「秘仏」扱いにしたと考えられる。

 

□等身大

 

■法隆寺夢殿の秘仏本尊である救世観音像 

古来から聖徳太子の等身大の像として法隆寺夢殿に伝承されている。秘仏・等身大の本尊として、大石寺9世日有が延暦寺・根本中堂本尊・薬師如来立像と並ぶ「戒壇の大本尊」の最大のモデルとしたと考えられる。

■弘安三年三月に日蓮が図顕した「臨滅度時の本尊」 

この本尊は、日蓮が1282(弘安5)10月、武州・池上の池上邸で臨終を迎えたとき、枕元の床頭に祀られていた本尊で、鎌倉の日蓮宗寺院・妙本寺に格蔵されている。立正安国会発行の「日蓮御本尊集」によると、この本尊は丈が161センチ。ほぼ等身大なのである。

■日蓮が佐渡在島中の文永10(1273)78日に図顕したとされる「佐渡始顕本尊」

この本尊は古来から身延山久遠寺に格蔵されていたが明治8(1875)の火災によって消失している。身延山久遠寺33代日亨の『御本尊鑑』によれば「絹地・幅79センチ・長176.3センチ」とあることから、縦180センチ近い大幅の等身大の曼荼羅であったことが判明している。

仏像を故人に見立てるというのは、位牌が日本に伝来する以前からのことである。位牌が中国から日本に伝来したのは、鎌倉時代。禅僧とともに日本に伝来したものである。等身大の位牌で有名なのは、大石寺9世日有の時代より後のものだが、松平4代親忠が文明7(1475)に建立した、松平家、徳川将軍の菩提寺として有名な大樹寺にある徳川14代将軍の位牌である。大樹寺の位牌堂には初代将軍・徳川家康から14代将軍・家茂までの位牌が、全て等身大に造立されている。

こういった等身大の位牌や曼荼羅本尊をモデルにして、大石寺9世日有は「戒壇の大本尊」を等身大に造立したと考えられる。

法隆寺8夢殿


法隆寺4夢殿
 

(救世観音像を祀る奈良法隆寺夢殿)