先日、東京・上野公園にある東京国立博物館の特別展「京都・洛中洛外図と障壁画の美」を見学・鑑賞してきました。洛中洛外図とは、京都の市街(洛中)と郊外(洛外)の景観や風俗を描いた屏風絵のこと。日本画独自の風景画と風俗画を合体した屏風絵ということもできる。
私もずいぶん昔から、「日蓮正宗系」や「仏教宗学」のことについて、いろいろと研究してきているが、こういう上古の昔の絵画、鎌倉・室町時代、安土桃山・江戸時代の絵画を鑑賞して、気がついたことがいろいろある。私の研究の場合、時代的には鎌倉時代以降のことが多いが、この洛中洛外図は、まさに室町時代、江戸時代のもの。私としては、1432(永享4)年に大石寺9世日有が京都伝奏に旅立った当時の、洛中洛外図はないかな、と思っていたのだが、洛中洛外図が描かれるようになったのは、1467年(応仁元年)の応仁の乱以降のことということなので、1432(永享4)年のころの洛中洛外図というものは、なかった。
今回の特別展に出品された洛中洛外図は、室町時代の歴博甲本、歴博乙本、上杉本、江戸時代の舟木本、福岡市博本、勝興寺本、池田本。このうち、歴博乙本、上杉本、勝興寺本、池田本は前期のみの出品というひとで鑑賞できず。舟木本は、もともと東京国立博物館蔵ということで、前期・後期通しての展示。私が最も目に止まったのは、この舟木本。展示第一部の冒頭、舟木本の巨大パノラマ映像が目に飛び込んで来て、いきなり度肝を抜かれる。このパノラマ映像が、実に簡単ながらも、わかりやすい解説付き。「方広寺大仏殿」「三条大橋」「花見の人たち」「祇園祭」「京都御所」「二条城」の様子が実によくわかる。洛中洛外図に描かれた絵とは、こんなにも興味深いものだったのかなと思った。これは単にガラスケース越しに絵画を鑑賞するだけでは、わからないものではないだろうか。江戸幕府二代将軍・徳川秀忠の娘・和子が後水尾天皇の女御として入内した様子を描いた部分があったのが、とても興味深く見えた。
もうひとつ、私が興味深かったのは、二条城二の丸御殿黒書院の襖絵が展示されていたこと。私は何度も京都に行っているのですが、二条城二の丸御殿にも、何度も見学に行っています。何と言っても二条城二の丸御殿そのものが、江戸時代初期の遺構がそのまま遺っていることは、まことに貴重なことであり、その黒書院の襖絵が東京で鑑賞できるというのは、まことに喜ばしいことである。ただ残念なのは、襖絵も江戸時代のものがそのまま遺っているせいか、経年劣化や色あせがとても目立つ。江戸時代のころの襖絵が、経年劣化によって、襖絵の美そのものも劣化してしまっているように見える。そこでひとつ提案したいのだが、新しく二条城二の丸御殿の襖絵、障壁画のレプリカを造ってみてはいかがだろうか。そうすれば、江戸時代初期の頃の襖絵、障壁画の美そのものがよみがえるのではないかな、と思ったのは私だけだろうか。スポンサーが付くかどうか等々の問題は、発生するのでしょうけども。
(東京国立博物館で開かれている特別展「京都・洛中洛外図と障壁画の美」)
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