■検証253・鎌倉時代・小氷期の極寒地獄の身延山に自生の楠木はなかった3

 

12001900年 の約700年間の日本ないし北半球は「鎌倉・江戸小氷期」だった1

 

12001900年くらいの約700年間、日本をはじめとする北半球は、「鎌倉・江戸小氷期」と呼ばれる寒冷期だったのであり、身延山周辺は、楠木の自生地域からは完全にはずれていた。

中世の小氷期の研究は、何も今に始まったわけではなく、ずいぶん前から気候学者・歴史学者等々の中で行われてきており、さまざまな著書や論文等で一般に発表されている。

日本の宇宙物理学者。太陽物理学、高エネルギー宇宙物理学の世界的な権威で早稲田大学理工学部総合研究センター客員顧問研究員。神奈川大学名誉教授。ユトレヒト大学、インド・ターター基礎科学研究所、中国科学院の客員教授。理学博士の桜井邦明氏は著書「太陽黒点が語る文明史・小氷河期と近代の成立」で次のように書いている。

「西ヨーロッパでは、全体としてみると、14世紀の開始前後から気温が下がりはじめ、19世紀初め頃になって、やっと現在とほとんど同様の状態にまで回復している」

「平均気温でみて、現在と比べてせいぜいセ氏1度しか低くなっていないことに注意していただきたい。これくらいの気温の低下で、氷河期に入ってしまっているのである」

(『太陽黒点が語る文明史・小氷河期と近代の成立』p10)

「九州の南の屋久島に生育する屋久杉の年輪中に残された酸素の同位体・18Oの分析結果をみれば、13世紀に入ると日本付近における気温の低下が始まっていることがわかる」

(『太陽黒点が語る文明史・小氷河期と近代の成立』p11)

 

さらに『太陽黒点が語る文明史・小氷河期と近代の成立』p12では、中国の気象学者・竺可楨が、中国の古記録から推定した5世紀から20世紀に至る気温の経年変化グラフを載せている。

これによると北宋・南宋時代から気温が下がりはじめ、12世紀から17世紀ころまで、現在の気温に比べてセ氏2度低くなっていることがわかる。

このグラフを元に桜井邦明氏は「小氷河期」について次のように書いている。

「小氷河期の気候は東洋も西洋もよく似ており、全世界的に気候が寒冷化していたことがわかる。屋久杉中の酸素の同位体18Oの分析結果も、当然のことながら、似た傾向を示している」

(『太陽黒点が語る文明史・小氷河期と近代の成立』p12)

「今までに示した気候変動に関するいくつかのデータから、地球環境の寒冷化は14世紀に入る前後から始まったことがわかる。そうして、この寒冷化は19世紀半ばまで続いて終わることになる。これらの結果に基づいて、多少の変動はあるものの、全体として気候が寒冷化していたこの500年ほどにわたる時代を、『小氷河期』と命名したのである」

(『太陽黒点が語る文明史・小氷河期と近代の成立』p12p13)

小氷期3



 

 

「小氷河期は食糧生産の低下が引き金となって始まった飢餓の時代であり、また、ペストの流行した時代でもあった。ペストやインフルエンザは、食糧不足で弱くなった人々に襲いかかり、多くの生命を奪った。小氷河期の始まった初期の時代に多くの人々がペストのために死んだのは、厳しい環境に耐えられなかったためであろう。この時代は、日本では室町期に当たっており、応仁の乱もその中に含まれている。当時に生きた人々が飢餓と悪疫に苦しんでいたことは、いろいろな史料の語るところである」

(『太陽黒点が語る文明史・小氷河期と近代の成立』p13)

「小氷河期の名前が意味するように、氷河時代の展開には、世界各地にある氷河の成長と発達とが伴っている。したがって14世紀前後から以後の小氷河期の発達に伴って、ヨーロッパ・アルプスやスカンジナビアにある氷河の末端が前進していたのは、当然のことである。スイス・アルプスの代表的な氷河ともいうべきアレッチ、アルジャンティエール、オーバーグレッチャーなどにも前進のあったことが、いろいろな史料からわかる。

(『太陽黒点が語る文明史・小氷河期と近代の成立』p14)

「地球の気候は、14世紀に入る前後から悪化し始め、東ヨーロッパ地方に人々が住むのが難しくなり、入植した子孫たちの西ヨーロッパへの移動が起こった。バイキングたちのグリーンランドからの悲劇的ともいうべき撤退も、この気候の悪化に伴っている。

地球全体をおおうような大きなスケールの気候変動の影響は、後に述べるように人口動態の上にもはっきりとみられる。中世の時代をおおっていた温暖な気候は、1300年頃を境として寒冷化に向かい、やがて小氷河期へと地球を引き入れることになる」

(『太陽黒点が語る文明史・小氷河期と近代の成立』p16)

「小氷河期が地球をおおっていた時代、ヨーロッパ大陸では農業生産が低下し、そのために商業経済活動が停滞していた。中世の時代にすすんだ農業革命は、小氷河期の発達とともに終わりを告げた。また東ヨーロッパから西側への人口移動は、農業生産の低下による危機を一層拡大し、多くの人々を飢餓におとしいれることになった。」

(『太陽黒点が語る文明史・小氷河期と近代の成立』p24)

14世紀初め頃から地球環境をおおいはじめた小氷河期が、歴史の上で、近代の成立と密接に関わり合っていたのではないかと推論したくなるのは、多分、私一人だけではないであろう。気候の寒冷化が人々の生き方に強制的に変更を迫り、一方で、ペストの流行が死への恐怖を媒介して、中世にはみられなかった人間観をもたらす役目を果たさなかったであろうか」

(『太陽黒点が語る文明史・小氷河期と近代の成立』p30)

 

日本の宇宙物理学者で太陽物理学、高エネルギー宇宙物理学の世界的な権威である理学博士の桜井邦明氏は、明確に14世紀前後から地球を小氷河期がおおっていたという説を唱えている。

雪の北北線79