■検証91・大石寺9世日有が京都・日隆門流からパクった教義・本迹勝劣2

 

□非常によく似ている大石寺の「種脱勝劣」と日陣「寿量一品正意」・日隆「八品正意」教学

 

大石寺の「本迹勝劣」が日陣門流・日隆門流の「本迹勝劣」のパクリであれば、それでは大石寺の「種脱勝劣」はどうなのか、という問題が起きる。実はこれも日陣門流・日隆門流のパクリである。

種脱勝劣は、直接、日蓮本仏義に結びつく教義であるが、京都本能寺・日隆門流は、日蓮本仏義は説いておらず、本門八品正意論の宗旨である。そのどこに「種脱勝劣」に似た教学があるのか。

「本果妙を称嘆するは脱益の機に対する顕本なり…さて本果所成の妙は本仏の脱益なり。末法当時名字即の凡夫口唱の妙法下種の手本に非ずと簡で本果妙覚の脱を廃して…本因名字即を顕本するなり。是末法当時下種の手本の顕本なり。…脱の機のためには本果を顕し下種の機のためには、本因妙を顕すと口伝すべきなり」

(日隆「私新抄」日蓮宗宗学全書8p85)

「久遠本因妙の釈尊の位と末法蓮師の位と一体なり。…所行の妙法又一致なるべし。此の時は釈尊も名字の凡人、日蓮聖人も名字の凡人にして全同なり。蓮師即釈尊、釈尊即蓮師なるべし」

(日隆「私新抄」日蓮宗宗学全書8p85)

「本果妙釈尊といふ方は在世正説の辺、本因妙地涌と言ふ方は十界久遠下種の辺なり。是流通の意なり。所詮釈尊上行同体にして一切衆生最初下種の時は本因上行と顕れ、得脱の時は本果釈尊と顕りるなり」(日隆「五帖抄」日蓮宗学説史p183)

 

一見すると、京都本能寺の開祖・日隆は、大石寺教学とまがうかのような教学を展開している。

わかりやすくするために、大石寺教学の日蓮本仏義を説き明かす代表的な偽作文書「百六箇抄」から、類文を拾ってみた。

「名字本因妙は本種なれば本門なり。本果妙は余行に渡る故に本の上の迹なり。久遠釈尊の口唱を今日蓮直に唱ふるなり。」

「久遠名字の正法は本種子なり。名字童形の位釈迦は迹なり。我本行菩薩道是なり、日蓮が修行は久遠を移せり」

「本果妙は釈迦仏、本因妙は上行菩薩、久遠の妙法は果、今日の寿量品は花なるが故に、従果向因の本迹と云ふなり」

「直達の法華は本門、唱ふる釈迦は迹なり。今日蓮が修行は久遠名字の振舞に芥爾計も違はざるなり」

「本因妙を本とし、今日寿量の脱益を迹とするなり。久遠の釈尊の修行と今日蓮の修行とは芥子計も違はざる勝劣なり」

(「百六箇抄」富士宗学要集1p1519)

一見して、両者の類似は明らかであろうと思われる。

 

 

□室町時代に交流があった大石寺9世日有と京都本能寺・日隆門流・勝劣派門流

 

「百六箇抄」については、日蓮宗・富士教学における通説によれば、京都要法寺偽作説が有力になっているが、これは誤った見解である。「アンチ日蓮正宗」は、「百六箇抄」は大石寺9世日有偽作説である。「百六箇抄」がなぜ京都要法寺の偽作ではなく、大石寺9世日有の偽作であるのか、については、「アンチ日蓮正宗・オフィシャルブログ」で詳述することとし、ここでは触れない。

大石寺ないしは大石寺9世日有が京都本能寺・日隆教学のパクリをするためには、大石寺9世日有と京都本能寺・日隆に何らかの接点がなければならない。大石寺は富士、本能寺は京都にあるが、それでは、京都本能寺・日隆と大石寺9世日有の接点はあったのか。

大石寺側の史料である「日有師・物語聴聞抄佳跡上」(日有御物語抄)には、次のようにある。

一、第廿九段本書曰尼崎の慶林坊の師匠広覚坊日学、冨士大石寺の門徒、讃州高瀬大弍阿闍梨日寿と土州幡多、庄山田郷在岡の法華堂真静寺と吉奈の富士門徒との問答は神力品の五重玄義は約教の五重玄か、約行の五重玄かと問ふ、日学は約行の五重玄と云ふ、日寿は約教の五重玄と云へり此問答なり已上。 (富士宗学要集1p233)

ここにある「尼崎の慶林坊」とは、京都本能寺の開祖・日隆のことと思われる。詳しい現代語訳は省略させて頂くが、大石寺門流と日隆門流で問答をした、というような内容である。

大石寺9世日有は、1432(永享4)に、京都天奏のために上洛している。

一方、日隆の事跡を照らし合わせてみると

1405(応永12)年 妙本寺を退出し比叡山、高野山に遊学。

1410(応永17)年 日存、日道と越後本成寺に日陣を訪ねる。

1415(応永22)年 本応寺を創建

1418(応永25)年 本応寺が破脚される。

1426(応永33)年 童型の自像を彫刻せしむる

1429(永享元)年 『四帖抄』を著す。本応寺を再建。第二次建立。立宗を宣言。妙蓮寺と断絶。

1431(永享3)年 日蓮百五十回遠忌を本応寺にて奉修。(『本能寺』p16)

となっている。つまり日隆は大石寺9世日有が京都に上洛した1432(永享4)の時点において、すでに日隆門流の教学の大綱を確立していた。こういったことからしても、大石寺の本迹勝劣・種脱勝劣、というか「百六箇抄」の本迹勝劣・種脱勝劣は、日隆門流教学のパクリである可能性が非常に高いと言えよう。

本能寺31三門
 

(京都本能寺)

9世日有4(諸記録)
 

(能勢順道氏の著書『諸記録』に載っている大石寺9世日有の肖像画)