□消費税率引き上げで出てきている「消費税率を上げる前に、宗教法人に課税しろ」との声

 

201441日から消費税率が5%から8%へと引き上げになった。その後、2015101日に予定されていた消費税率10%引き上げは、1年半先送りされて201741日になった。現在の自公連立政権は、生活必需品等々について軽減税率を導入する案が浮上している。そして消費税率8%引き上げにより、国家財政の歳入では、消費税収入が所得税収入を抜いてトップになるという。なぜ消費税率を上げて歳入増加を計らねばならないのか。

日本政府の説明によれば、少子高齢化による勤労人口の減少による所得税収の伸び悩み。国際化時代と円高により日本企業の工場・営業拠点などが海外に移転していくことによる法人税収の伸び悩み。そして少子高齢化による老齢人口の増加により、毎年1兆円ペースで増えつづけている社会保障費による歳出増。これにより、日本の財政赤字は膨らむ一方で、ついに日本の借金の累計が1000兆円を超えたという。こういった一向に改善しない財政赤字問題。これらの問題を解決するには、消費税率を引き上げるしかない。この論理である。

歳出削減を掲げ「消費税は4年間は上げない」と言って政権をとった民主党政権がマニフェスト実現に失敗。その民主党政権自ら消費税10%引き上げを決めるという皮肉な結果に終わった。1980年代後半から90年代に起こっていた「消費税反対」「消費税率引き上げ反対」の声は、今やほとんど聞かれなくなった。2010年から12年にかけて消費税率引き上げが議論されていたころ、「消費税率を上げる前に歳出削減をしてムダを省け」だの「消費税率を上げるなら国会議員の定数削減をして、国会議員自ら身を削れ」だの「消費税率を上げる前に金持ちや大企業に課税しろ」だのということが盛んに沸騰していたが、「アンチ日蓮正宗」に届けられていた意見は、「消費税率を上げる前に、非課税特権を享受している宗教法人に課税しろ」というものだった。こういうご意見が沸騰するのは、ごもっともだと思う。私も基本的に「消費税率を上げる前に、宗教法人に課税しろ」とご意見に賛成であり、これは「アンチ日蓮正宗」のメンバーの方からも出たものだった。

日本は、1997年の消費税率5%引き上げから長くつづいたデフレ不況により、経済は停滞し、賃金は上がらず、勤労所得は増えない。バイトや契約社員などの有期雇用が増加する一方で、雇い止めなどによる失業が増加。長びくデフレ不況で働き口は見つからず、特に20代の若い人の就職難問題、ワーキングプア問題、フリーター、ニート問題がどんどん出てくる。こういう中で、逆進性が指摘される消費税の税率が引き上げられれば、勤労者、フリーター、ニートの財布を直撃する。「オレたち弱者をいじめるなよ。非課税特権の宗教法人から、カルト宗教からカネを取れよ」という声が沸き上がるのも当然だろう。1980年代、90年代のころは、「金持ちから税金を取れ」「大企業から税金を取れ」という声が沸き上がっていた。ところが時代は、国際化時代になり、アジア、アフリカ、中南米、オセアニアの新興国が台頭する時代になった。日本のお金持ちや大企業は、少しでも所得税、法人税の税率が低い国を見つけて日本から脱出していく。

 

 

□今こそ政治の強い指導力で日本でもカルト宗教を取り締まる新立法を行うべきである

 

今や日本全国各所で、豪勢な建造物を建てているのは、巨大な収入源と資産を持つ宗教法人である。創価学会は東京・信濃町の創価学会本部を建て直し、全国各地に会館を建てて、巨大墓苑を造成している。日蓮正宗も、広布坊、客殿、奉安堂を新築し、信徒から120億円もの大金を集めて御影堂を修復し、塔中坊もほとんど建て替えてしまった。

近年のマスコミ報道等によれば、創価学会、立正佼成会、真如苑等々の新宗教団体の巨大な収入、巨大な資産が報じられている。しかも宗教法人の寄付収入は非課税。副業収入も、優遇税制が取られているということになれば、「消費税率を上げる前に、宗教法人に課税しろ」との声が上がるのも当然だろう。しかし宗教法人課税強化問題は、何も今にはじまったものではない。

1970年代、80年代の創価学会批判が世間で沸騰した時も、1990年代にオウム真理教問題にはじまる宗教法人法改正の時も叫ばれたのだったが、いまだに実現しないのである。なぜ実現しないのか。それはまず創価学会を支持母体とする公明党の存在。公明党がすでに1970年代のころから都道府県議会、東京特別区・市町村議会で与党化していること。そして1993年の細川内閣、羽田内閣、1999年以降の自民党・公明党の「自公連立」で、国会でも与党化していること。1995年の宗教法人法改正問題のときは、創価学会に支援された新進党が、国会内で実力行使により池田大作参考人招致を阻止したこと。宗教団体の多くが、自民党、民主党の議員を支持・支援していること、等々があげられる。宗教法人課税問題は、2000年代のころ「聖域なき構造改革」を標榜して、国民の支持を集めた小泉純一郎首相の「小泉構造改革」でも手が付けられなかった、まさに文字通りの「聖域」と化してしまっている。

「消費税率を上げる前に、宗教法人に課税しろ」との声を、単なるストレス発散のために叫ぶだけなら、これをいかにして実現させるかという手段を考える必要もなかろう。しかし現実に、20174月から消費税率が8%から10%に引き上げられることが決まっており、さらに赤字財政との関連から、さらに消費税率が15%、20%へと引き上げが政治課題に登ろうとしている中、宗教法人課税をストレス発散で叫ぶだけでは済まないだろう。宗教法人課税強化問題は、消費税率引き上げ問題と関連して、いずれ政治の重要なテーマとしてあがってくることだろう。

しかし今後の宗教法人課税強化問題は、相変わらず、単に課税問題のみ取り上げるだけでは、過去の失敗の二の舞になるだけだと思われる。ではどうすべきか。ただ単に宗教法人課税強化問題だけを取り上げるのではなく、国民の信教の自由を侵害し、異常なカネ集めを行っているカルト宗教を取り締まる新立法、政教分離を規定する新立法を行う中で、カルト宗教課税強化も行う。

よくフランスでは「○○はフランスではカルト宗教に指定されている」という声を聞くが、何もフランスに頼らずとも、日本でもカルト宗教を取り締まる立法を行えばいいのである。そのためには政治の強い指導力が必要である。小泉純一郎首相は、自民党の巨大支持勢力だった「郵政」の反対を押し切って郵政民営化を実現した。安倍晋三首相は、同じく自民党の巨大支持勢力「農協」改革を進めている。これと同じように自民党の巨大支持勢力「宗教法人」の改革、カルト宗教を取り締まる強い指導力が求められているのである。

知る権利皮肉1
 

(自民党の巨大支持勢力「農協」改革を進めている安倍晋三首相・ユーチューブの映像より)