□「宗教団体の目的の著しい逸脱、法令違反して著しく公共の福祉を害することは許されない」と答弁した坂田道太文部大臣

 

かつて1960年代、70年代のとき、特に創価学会の言論出版妨害事件のころ、日本共産党が創価学会批判・公明党批判の急先鋒だったことを知る人は、少なくなった。創価学会員の中に、今も「反共産党」「アンチ日本共産党」的な信者がいるのは、創価学会の言論出版妨害事件のころの、日本共産党による過激な創価学会批判・公明党批判のアレルギー症状ではないかと思われる。それほど1960年代、70年代の日本共産党の創価学会批判・公明党批判は過激であり、共産党のみならず日本社会党や民社党も過激な創価学会批判・公明党批判をしていた。創価学会の言論出版妨害事件のときは、共産党、社会党は国会等で池田大作・創価学会会長(当時)の証人喚問を要求。谷口善太郎・共産党衆議院議員が「創価学会の国立戒壇義は憲法違反ではないか」との質問を行い、これが1970(昭和45)53日の創価学会本部総会における池田大作会長と大石寺66世細井日達法主の「国立戒壇の名称不使用」宣言と「政教分離」宣言につながったことは、承知の事実である。そこで昭和45(1970)39日の衆議院予算委員会での谷口善太郎・共産党衆議院議員の質疑に対する答弁の中で、坂田道太文部大臣が「信教の自由」についての見解を示している。これを、国会議事録から引用して、ここにピックアップしてみたい。

「谷口委員 創価学会が政治的進出の第一歩として、昭和三十年四月に、一斉に地方選挙に出たのでありますが、このときに、東京都議会その他各地の地方議会へ全員五十四名の候補者を立てて選挙戦を行なっております。そのときの目的を創価学会の機関紙で調べてみますと、「聖教新聞」はこういうふうに社説で説明しております。これは私は持ってまいりましたから読んでみます。「広宣流布の終点は国立戒壇建立である。その為には国会での議決が必要だ、すると宗教の正邪に対して確たる信念を持ち国立戒壇建立を願う人々の代表が国会議員として多数居なければならない事は論をまたないのである。故に文化部員の政界への進出は当然でなければならぬ」こう言っております。それからもう一つの社説で、「現在の政治家に国立戒壇の必要を理解する様に要望しても到底無理な相談であって、逆に国立戒壇建立の必要を理解して居る人に政治家になってその道で生長してもらう以外に方法がないからである。だからこの志を持って居る人々に地方議会に出てもらいそこでの錬磨を経て国会へ出る迄その政治上の見識と実践カを養ってもらう事が必要になるわけである。」こういう点から地方議会に進出して当選されたことは皆さん御承知のとおりでございます。宗教団体創価学会が言う戒壇というのは、これは宗門の本尊を安置して拝ませる施設でありまして、これを国立にするというので、戸田前会長や池田現会長の著作によれば、国会の議決によって国の施設として設立するということになっております。そこで伺いますが、こういう目的で創価学会が政界に進出をしたということを政府は知っておられたかどうか。……こういう事実を政府は知らなかったのですか。知らなかったのですね。――そうですか。それじゃ法制局長官に次に聞きます。創価学会の戒壇を国が国立戒壇として建立することは憲法違反と思いますか、どうですか。

 

 

□昭和45(1970)年の坂田道太文部大臣の答弁は国際人権規約の条文と規を一にするものだ

 

○高辻政府委員 …しかし先ほど申し上げたように、国は宗教的活動をしてはならない、また公金その他公の財産は宗教団体の便益等に供してはならないということがございますから、それに当たれば憲法違反になるということで、十分におわかりいただけると思います。

○谷口委員 つまり憲法違反になるということです。それじゃ重ねて聞きますが、創価学会が昭和三十年にこのように国立戒壇の建立を目的として政界に進出したことについて、政府はどうお考えになりますか、妥当だと思いますか、それともここになかなか無理があると思いますか。これは文部大臣。あなたは宗教団体に関連しますからな。

○坂田国務大臣 宗教団体でございましても、先ほど法制局長官が申されたように、一般の個人または団体と同様に、憲法によって集会、結社その他一切の表現の自由が保障され、その一環として政治活動を行なうことも保障されておるところでございます。また、宗教法人である宗教団体は、宗教法人法により、宗教活動を行なうことを主たる目的とすることを要件として法人格を取得しているのでございます。でございますから、おそらくそういう意味で法人格を取得したものであると思いますが、しかし、宗教法人としての活動を行なうことによりまして、この宗教団体の目的を著しく逸脱したり、あるいは法令に違反して著しく公共の福祉を害することが明らかに認められるような事態を招くことは許されないということになっておるわけでございまして、要は宗教団体の目的を著しく逸脱しておるのか、あるいは法令に違反して、著しく公共の福祉を害することが明らかに認められるのかどうかという具体的な問題かと思うのでございます。」

この谷口善太郎・共産党衆議院議員の質疑はまことに注目すべきものである。国立戒壇が憲法違反の疑いがある答弁を引っ張り出したばかりか、当時の第3次佐藤栄作内閣の坂田道太文部大臣から「宗教法人の活動は、宗教団体の目的を著しく逸脱したり、法令に違反して著しく公共の福祉を害することが明らかに認められるような事態を招くことは許されない」という答弁を引っ張り出している。この坂田道太文部大臣の答弁は1966年の第21回国連総会において採択され、1976年に発効した国際人権規約の自由権規約(国際人権B規約)

「第十八条1 すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。2 何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。3 宗教又は信念を表明する自由については、法律で定める制限であって公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要なもののみを課することができる。」

との規定と軌を一にするものである。国際人権規約の社会権規約(国際人権A規約)、自由権規約(国際人権B規約)を、日本は1978年に署名し、1979年に批准している。カルト宗教取締新立法には、国際人権規約の条文の精神、昭和45(1970)39日の衆議院予算委員会での田道太文部大臣が「信教の自由」についての見解をを明確に規定すべきである。

坂田道太1
 

(3次佐藤栄作内閣の坂田道太文部大臣)