■検証13・日蓮正宗大石寺に「日蓮の御肉牙・歯骨」は存在しない13

 

□日蓮の歯二粒を古来から格蔵している日蓮宗・玉沢・妙法華寺

 

玉沢・妙法華寺は、古来から「日蓮の歯」を格蔵してきたことで知られているのですが、私がいろいろ調べた結果としては、玉沢・妙法華寺の「御肉歯」は、日蓮の本物の歯のようなのです。

その最大の根拠は、玉沢・妙法華寺の開祖で六老僧第一の日昭から相承された玉沢・妙法華寺・日祐の1358(延文3)年の譲り状に、この「日蓮の歯」が出てくる、ということである。この中に、以下の文が書いてある。

「本尊聖教並に先師聖人御歯二粒御自筆の状相添へ都て御譲状の如く其外此宗の法門、相承口決等、残す所なく法嗣日運に相伝せしめ畢ぬ。御遺跡の事においては日昭法印定めおかる之通末代まで相違あるべからず。仍って譲状件の如し。延文三年三月十六日。 日祐花押」

(日蓮宗宗務院発刊『創価学会批判』p76)

さらに「日蓮宗宗学全書・上聖部」には、文保元年(1317)十一月十六日の日昭「御遺跡の事」という文書が載っていて、これには註法華経と日蓮の歯二粒、法門相承を記していて、日蓮の歯を

「御存生之時まのあたり聖人の御手より賜ふ所なり。夙夜向顔の思ひをなすべし」

と述べているという。(日蓮宗宗務院発刊『創価学会批判』p76)

玉沢・妙法華寺開祖の日昭が死去したのは、元亨3(1323)326日、103才の時であるので、この「御遺跡の事」は、日昭在世の文ということになる。ということは、玉沢・妙法華寺の「日蓮の歯」は、開祖・日昭の在世の代から存在し、格蔵されていたと言うことになる。もし、玉沢・妙法華寺の「日蓮の歯」が偽作だとすれば、これを偽作した人物は、日昭以外にあり得ないと言うことになる。

玉沢・妙法華寺開祖の日昭とは、六老僧第一で、日蓮入滅の葬送では後陣で大導師を務めた人物。いわば、日蓮一門の弟子・檀那衆の筆頭にあり、註法華経の配分を受けた人物である。

そのような人物が、わざわざ「日蓮の歯」を偽作するなどということは、到底考えられない。偽作する動機も目的も、その必要性も全くないばかりか、「日昭が日蓮の歯を偽作した」とする異議が、どこからも上がっていない。だれ一人、そんなことを言っていないのである。しかも六老僧第二の日朗が二祖になった池上本門寺も、「日蓮の歯」を格蔵しており、日朗が日蓮から歯を授与されていることからして、日朗より僧階が上位にある日昭も、「日蓮の歯」を日蓮から授与されている、というのは僧侶社会の常識として、当然あり得ることである。このように色々な面から検証しても、玉沢・妙法華寺が格蔵する「日蓮の歯」は、本物であるとせざるを得ない、ということである。

 

 

□本堂に「玉澤道場」の扁額が掲げられていた日蓮の歯を格蔵する日蓮宗・玉沢妙法華寺

 

玉沢・妙法華寺での私の関心は、本尊や堂宇よりも、この寺が格蔵している「註法華経」「撰時抄」「日蓮の歯」といった「文化財」である。中でも「註法華経」「撰時抄」が日蓮真筆として国の重要文化財に指定されていることは特筆されるべきものです。こういう玉沢・妙法華寺が格蔵する文化財に、非常に高い関心を抱く中での訪問でしたが、日程上の都合から、法要も何もない日の訪問。

「文化財を一目みたい」という気持ちもあったので、「お風入れの法要はないのかな」と思って探したのですが、「お風入れ法要」という行事は年中行事に見当たらない。日蓮宗新聞社発刊の「日蓮宗本山めぐり」という本にも、年中行事に「お風入れ法要」は書いてありません。これは、訪問した後から判明したことなのですが、玉沢・妙法華寺では、「お風入れ法要」という行事を長期中止にしていたのです。しかし玉沢・妙法華寺に行く前に、この情報はつかんでいませんでした。

さて玉沢・妙法華寺の三門をくぐると、本堂につきあたる。本堂の入り口の上には、「玉澤道場」と書かれた扁額が掲げられていて、本堂入り口前には、お賽銭箱も置かれていた。本堂に向かって左側が祖師堂、右側が書院で、書院の奥に庫裡がある。そして書院のちょうど向かい側に、ちょっと大きめの宝蔵が建っていた。日蓮真筆の曼荼羅、註法華経、撰時抄等々の文化財や什宝の類はこの中に納められているようです。玉沢・妙法華寺入り口脇には、「当山由緒沿革と宝物」と書いた案内板があり、ここに玉沢・妙法華寺の略歴が書いてあります。もともと、鎌倉の「玉澤」にあったのですが、戦乱等を避けてこの地に移転し、地名も「玉澤」と改めたということである。

その案内板の隣接して、玉沢・妙法華寺の境内図もあります。これを見ると、境内の中の堂宇が、実によくわかります。向かって左から祖師堂、本堂、大書院、庫裡・受付という堂宇の並びになっていて、祖師堂と本堂が並んで建てられているのは、日蓮宗寺院に共通した建て方です。

私は、玉沢・妙法華寺の境内を見学していた時、三門、堂宇、三島市教育委員会が建てた案内板、撰時抄の碑、日蓮像などを次々と写真撮影していたのですが、すると庫裡のほうから「何か」と、誰かが私に声をかけて来たのです。振り返ってみると、小さな赤ちゃんを抱えた一人の老僧が、こちらを見ていました。「あれ、ひょっとして玉沢・妙法華寺の貫首か?」と思った私は、その老僧に近づいてご挨拶。「これは大変失礼致しました。玉沢・妙法華寺さんの貫首猊下でいらっしゃいますか」と言うと、その老僧はちょっと怪訝な表情を浮かべて、「あっ、ああ」という返事。

どうやら玉沢・妙法華寺65世小池日恩貫首猊下のようです。予想外に玉沢・妙法華寺の貫首にばったり遭遇したことに、私の方が驚きました。

妙法華寺19本堂
 

(玉沢・妙法華寺・扁額)

妙法華寺案内3
 

(玉沢・妙法華寺・案内・宝物)

妙法華寺23撰時抄
 

(玉沢・妙法華寺・撰時抄)

妙法華寺27撰時抄碑
 

(玉沢・妙法華寺・撰時抄碑)

妙法華寺24註法華経
 

(玉沢・妙法華寺・註法華経)