■検証20・日蓮正宗大石寺に「日蓮の御肉牙・歯骨」は存在しない20

 

□人間の「歯」について神奈川県歯科医師会・歯の博物館・大野館長との質疑応答記4

 

○私「入れ歯(義歯)とは、いつごろから、あるのでしょうか」

□館長「現在までに発見された最古の木床義歯は、1538年に74才で没した、和歌山県願成寺の仏姫(尼さん)の上顎の総義歯です。これは技術的に完成されており、こうした義歯制作の技術の発生は、それよりも相当以前のものと思われます。木床義歯の製造は、室町時代末期と思われ、鎌倉時代には全国的に普及していたのではないかと思われます。

鎌倉時代以降には、義歯制作を専業とする『入れ歯師』が現れ、江戸時代になるとその技法は完成されました。

江戸時代、入れ歯を制作した者は、入れ歯師と呼ばれ、香具師(やし)の仲間で入れ歯を作ったものを、入れ歯渡世人と呼ばれました。明治初期になって、西洋の義歯が伝えられてからも、木床義歯が喜ばれたのですが、当時の西洋文化を至上とする風潮から価格も安く、技法がむずかしいことから、次第に姿を消していきました。

木床義歯は、床に『つげの木』が使われました。これは口の中で適合性に優れていたためです。前歯には象牙、蝋石、人や動物の歯が使われました。奥歯には金属の鋲が使われ、ひどく摩耗した鋲が見られることから、咀嚼も充分にできていたと考えられます。」

□館長「日本には縄文時代から木の文化をもっていましたが、日本固有の木で作られた義歯は、現在の義歯と比較して、審美的にも実用的にも、遜色のないものが、数百年前には完成していました。この木床義歯(木の入れ歯)は、仏師の手慰みから生まれたものではないかと考えられます」

□館長「江戸時代に義歯をしていた有名人としては、滝沢馬琴、杉田玄白、本居宣長、平賀源内らがいます。また、江戸時代の初期、遊行寺の貫首が総義歯を入れていたという記録が残っています」

○私「その当時は、義歯はいくらぐらいしたのでしょうか」

□館長「1831(天保2)94日の馬琴日記によれば、上下の入れ歯の代金が一両三分(1.75)だったと記してあります」

○私「当時としても、かなり高額なものだったと思われるわけですが、上古の時代、義歯を入れていた人とは、どういう人だったのでしょうか」

□館長「江戸時代でも義歯は、かなり高価なものだったようなので、一般庶民が義歯を入れていたとは考えにくいですね。ただし、滝沢馬琴、杉田玄白、本居宣長、平賀源内らが義歯を入れていたということなので、医師、医学関係者、公家、武家、僧侶は義歯を入れていたと考えられます。」

 

 

○私「大石寺17世日精(16001683)は、80才を超えた晩年でも、江戸常在寺で説法をしていたという記録が残っています。江戸時代に、歯科治療はあったとはいうものの、今の歯科治療の技術に比べれば、それは比べものにならないと思います。私が子どもの頃にも、ほとんど歯が抜けてしまって、義歯も入れていない老人がけっこういました。そういう人は、歯がないため、フガフガになって、喋れませんでした。ということは、80才を超えても、寺院で説法をしていたというのは、義歯を入れていたとしか、考えられないわけですが」

□館長「そうですね。義歯を入れていたか、あるいは自分の歯が残っていたか。義歯を入れていた可能性のほうが高いでしょう。僧侶は義歯を入れていた階層のひとつであり、17世紀初頭には、遊行寺の貫首が総義歯を入れていた記録がありますから」

○私「現代は、一般大衆から見て、日本各地の寺院に格蔵される『日蓮の歯骨、歯牙は本当に日蓮の歯なのか』ということに関心が集まっています。昔だったら『これはお釈迦さまの舎利です』『これは日蓮聖人の歯です』と言われれば、大衆は手を合わせて合掌しました。今でも手を合わせる人はいらっしゃいのすが、しかし時代が変わってきています。

創価学会、顕正会、日蓮正宗などのカルト宗教の問題等々があり、『カルト宗教に騙された』という被害の声が上がっています。これと関連してでしょうが、『本当に仏様の舎利なのか』『本当に日蓮の歯なのか』『科学的に本物だと証明されているのか』『本物なのか科学鑑定しろ』等々、こういう疑問が沸騰しています。ですから、例えば日蓮の歯なら歯に対する科学的研究、学問的研究に関心が集まってきている、というわけです。何か、鑑定する方法はありませんか」

□館長「DNA鑑定でしたら、大きな医科大とか、歯科大でやっていると思います。別の鑑定法として、日本大学松戸歯学部で、歯芽解剖学というものがあり、二つ以上の歯が同一人の歯かどうかを鑑定する方法があります。その日蓮の歯を格蔵しているというお寺と交渉してみては、いかがでしょうか」

○私「池上本門寺や千葉館山の本行寺では聞いたことはありませんが、玉沢・妙法華寺では、日蓮の歯骨については、公開できないという回答を得ています。大石寺では、50年に一度の日蓮の遠忌の年と法主の代替法要の時のみに、信者のみに公開すると言っています」

□館長「どうして公開しないんでしょうね」

○私「それはおそらく、鑑定の結果、日蓮の歯ではないという結果が出ることを怖れているのだと思います。そんな結果が出たら、寺院としては面目丸つぶれ。それに今まで数百年の間、ニセモノを本物だと言い続けてきたことになりますから。そう簡単に公開しないと思います」

□館長「なるほど、そうですか。宮内庁が天皇陵の発掘を認めないのと、よく似ていますね」

神奈川県歯科医師会・歯の博物館・大野館長には、貴重な時間を割いて頂いたうえ、いろいろと教えて頂き、まことに感謝に堪えません。本当に貴重で有意義なひとときでした。

ありがとうございました。

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