■検証117・「富士門流執着軍団」や東佑介氏らの「百六箇抄」京都要法寺偽作説は誤りである10

 

□大石寺59世堀日亨が岡宮光長寺学頭・大林日有氏から得たとされる秘蔵抄の真偽の検証

 

東佑介氏の「百六箇抄」京都要法寺偽作説、本是院日叶(左京阿闍梨日教)が、著書で説いている教学は大石寺教学ではなく日尊門流の教学であるとする説、ないしは本是院日叶(左京阿闍梨日教)が生涯にわたって大石寺9世日有の門に帰伏していない、とする説の根拠になっているのが、左京阿闍梨日教が出雲の師匠・日耀(日尊門流)から相伝したとされる「本因妙抄、百六箇抄、本尊七箇相伝、産湯相承の合本」の「秘蔵抄」というわれる文書の所在である。「本因妙抄、百六箇抄、本尊七箇相伝、産湯相承の合本」の「秘蔵抄」とは、大石寺59世堀日亨が著書「隠れたる左京日教師」の中で述べているもので、静岡県沼津市の岡宮・光長寺の学頭・大林日有氏から左京阿闍梨日教の前名・本是院日叶の史料を得たことを明かして、次のように書いている。

「岡宮(光長寺)にて得たる(本是院)日叶師の史料とは、本因妙抄、百六箇抄、本尊七箇相伝、産湯相承の合本の奥書なり。この写本は筆者不明なりといえども、最奥に寂光寺(※顕本法華宗)の貫首なる通義日鑑の直筆の記文あれば、ほぼその時代を得。また日鑑はこれを隣地の要山(※冨士門流八本山のひとつ・京都要法寺)より得しものなるべし。

その奥書に云く 本云本是院日叶之(原本は日叶師のものなりしや)

本云、…以前、此の秘蔵抄を先師日耀より相伝有りと雖も当(雲州)乱馬来本堂院坊破壊畢ぬ。然る間本尊聖教皆々紛失…   文明十一年八月二十八日 日叶在判

唯我与我の大事、七面七重の大事並びに産湯の大事等に付き、相承云之り在り。然るに選略の分なり。但し去る文明九年、堺の乱に依り、諸聖教等を淡州岩屋に運び、而に彼の在所焼失、彼の所に於いて焼き畢ぬ。又、先年、有る人の方より七面七重の相伝を畢ぬ。此の本は広く悉く也と雖も、不審多多也。…然る処に本是院日叶上人より送り給うて、相伝の恩備に預かり畢ぬ。…

文明十七年巳十月十九日   八十六歳日乗在判

本云 調御寺日乗上人に授与し奉る 文明十五年卯五月十五日   日叶在判」

(大石寺59世堀日亨の著書「隠れたる左京日教師」p5860)

秘蔵抄1


秘蔵抄2
 

この中の「寂光寺(※顕本法華宗)の貫首なる通義日鑑」とは、京都洛東・寂光寺二十二世永昌院日鑑(18061869)。調御寺とは大阪府堺市にある法華宗真門流の寺院で、明徳元年(1390年)に日乗が開創した寺院。

59世日亨2
 

(大石寺59世堀日亨)

寂光寺5本堂


寂光寺6本堂
 

(京都洛東・顕本法華宗寂光寺・京都要法寺の隣にある)

 

 

□本当に岡宮光長寺宝蔵に「秘蔵抄」が存在しているのかどうかを「アンチ日蓮正宗」で調査

 

日宗年表には、1483(文明15)510日、左京阿闍梨日教が堺・調御寺の日乗に宗義相伝書を授けた、との記述が出てくる。

堀日亨の著書・「隠れたる左京日教師」の中で紹介されている史料・本因妙抄、百六箇抄、本尊七箇相伝、産湯相承の合本の奥書の中に「此の秘蔵抄を先師日耀より相伝有り」と書いてあること、

そして「本是院日叶上人」「文明十五年卯五月十五日 日叶在判」とあることから、本是院日叶(左京阿闍梨日教)は大石寺9世日有滅後の文明15(1483)まで、大石寺9世日有の門下ではなく、日尊門流にいたとの解釈である。そうなると、本是院日叶(左京阿闍梨日教)の教学は、大石寺9世日有の教学ではなく、京都要法寺・日尊門流の教学だということになる。

さらにこの「秘蔵抄」の存在から、「此の秘蔵抄」を「本因妙抄、百六箇抄、本尊七箇相伝、産湯相承の合本」と解釈し、本是院日叶が出雲の師匠・日耀(日尊門流)から相伝したものであるから、「百六箇抄」を偽作したのは日尊門流(要法寺)であるとする説が出てきている。これは、東佑介氏という人物が、「此の秘蔵抄」を元にした「百六箇抄・要法寺偽作説」「称徳符法本尊・附法の曼荼羅・室町時代存在説」を立てて、これに異常なほどの執着心を見せている。

しかしその東佑介氏も、「此の秘蔵抄」なる文献が、真書かどうかの検証をしたという記事は、東佑介氏の著書・ブログを読む限り、全く載っていない。つまり何の検証もせずに、「此の秘蔵抄」なる文献を真書と決めつけて、勝手な説を立てていると言うことである。こう言うと「検証はした」と、後出しジャンケンのように言ってくるのだろうが、自説を組み立てる上で重要な文献の真偽検証を、著書に載せないというのは、どう考えても「正鵠を得ていない」(東佑介氏)と言わざるを得ない。

そうなると堀日亨が岡宮・光長寺の学頭・大林日有氏から得たとされる「本因妙抄、百六箇抄、本尊七箇相伝、産湯相承の合本の写本」の信憑性・真偽がまず第一に問題となるわけで、これが本当に岡宮光長寺に存在するのかどうかを「アンチ日蓮正宗」で独自に調査した、ということである。

光長寺30
 

(岡宮・光長寺三門)

光長寺21本堂
 

(岡宮光長寺本堂)

9世日有4(諸記録)
 

 (能勢順道氏の著書『諸記録』に載っている大石寺9世日有の肖像画)