□僧侶の選挙で選出されたのに日蓮正宗管長の絶対権力の前に形骸化している宗会、監正会
日蓮正宗には、教師僧侶の選挙で選ばれた宗会議員によって組織される「宗会」(しゅうかい)、同じく教師僧侶の選挙によって選出される監正会員、常任監正会員によって組織される「監正会」(かんせいかい)があり、さらに日蓮正宗管長(大石寺法主)が任命する「参議会」という組織もある。
「宗会」とは、宗教法人・日蓮正宗の経常会計・特別会計の予算案、決算案の審議・議決、日蓮正宗の憲法・法律に相当する宗制(しゅうせい)、宗規(しゅうき)の改正案の審議・議決、日蓮正宗の特別行事法要の慶祝局・記念局・護法局規約の制定・改正案の議決・承認、慶祝局・記念局・護法局の予算案・決算案の議決・承認、寺族同心会の規約改正案・予算案・決算案の議決・承認、富士学林大学科規約改正案・予算案・決算案の議決・承認、日蓮正宗の末寺寺院教会の等級、宗費賦課金(日蓮正宗寺院・僧侶が宗務院に宗費として納めるカネ。宗務院が寺院・僧侶から取り立てる税金に相当するカネ)の負担割合、日蓮正宗僧侶が宗務院に納める度牒義納金(出家・度牒の時に納入するカネ)、昇級義納金(僧階が昇級したときに納入するカネ)、任命義納金(上級の住職・主管に任命されたときに納入するカネ)の負担金、宗内の請願の議決し宗務院に回付する、建議案・意見書・建議書を議決し宗務院に回付する、宗務行政を調査する、宗務行政について宗務院に質問する、といった権限がある、日蓮正宗の立法機関・国会に相当するものである。
「監正会」とは、宗務院が下す懲戒処分に対する不服・異議申し立てを審査し、懲戒処分の無効を裁決することもできる。ただし、日蓮正宗・宗規の規定によれば、
「第九十一条 監正会の審査及び裁決に際しては、何人も干渉してはならない。
第九十二条 監正会の裁決を求めようとする者は、選挙については第百三十三条第一項に定める期間内に、懲戒処分についてはその効力が発生した日から十四日以内に、書面をもって会長に申立てなければならない。」
「第九十四条 会長は、申立書を受理したときは、直ちに監正会を開いて審査し、裁決しなければならない。但し、申立書が本宗の法規に違反していると認めたときは、その理由を付して直ちに却下する。2 裁決は、常任監正員の定数の過半数で決する。第九十六条 監正会の裁決については、主文及び理由を明記した裁決文を作成し、これを会長より直ちに管長に上申し、同時に申立人に送達しなければならない。」
「第九十七条 管長は、監正会から前条の上申があったときは、その裁決につき裁定する。
第九十八条 管長の裁定に対しては、何人も異議を申立てることはできない。」
とあり、監正会の裁決は日蓮正宗管長(大石寺法主)に上申され、管長が最終的な裁定をする。
過去において、宗会が日蓮正宗管長(大石寺法主)・宗務院の意向に逆らうかのような建議をしたり、監正会が懲戒処分の無効を裁決したことがあったが、日蓮正宗・宗規第234条・235条の
「管長を誹謗又は讒謗(ざんぼう)し、訓戒を受けても改めない者」
「正当な理由なく宗務院の命令に従わない者」
の規定の前に、押し切られた。
□法主専政を押し通す為なら軍事独裁国家並みの謀略を行う極めて危険な体質を持つ日蓮正宗
日蓮正宗管長(大石寺法主)は、日蓮正宗の最高指導者として宗内の行政権と司法権(僧侶・信徒を罰する懲戒処分を下す権限)を握っており、宗会議員、常任監正会員といえども、日蓮正宗の教師僧侶であるから、宗制・宗規違反があれば、懲戒処分になってしまう。さらに日蓮正宗管長は、宗会を招集する権限だけではなく、宗会を停会、解散する権限、宗会議員選挙を発令する権限を持っている。つまり日蓮正宗管長(大石寺法主)・宗務院と宗会の意見が対立したとき、管長は宗会を停会、解散できる。1925(大正14)年、「反管長派」が多数を占めていた日蓮正宗宗会と評議員会(今の参議会)が、時の管長・大石寺58世土屋日柱法主に「不信任決議」を突きつけて、日蓮正宗管長・大石寺法主の地位から追い落とした「日柱クーデター事件」が有名だが、現在は宗規第6条に「法主は、遷化(死去)又は自らの意思による以外はその地位を退くことはない。」
と規定されていて、宗会、参議会が日蓮正宗管長(大石寺法主)を弾劾・解任させることができないばかりか、「不信任決議」を突きつけることもできない。「反管長派」が多数の宗会を、管長が解散して、宗会議員選挙を行い、再び「反管長派」が多数になった場合、宗会は管長に「不信任決議」を突きつけて、管長を弾劾、解任させることができないばかりか、宗務行政がますます停滞する。
そこで近年は、日蓮正宗管長(大石寺法主)・宗務院が、宗規第234条・235条・240条の
「正当な理由なく宗務院の命令に従わない者」「管長を誹謗又は讒謗(ざんぼう)し、訓戒を受けても改めない者」「住職、主管又はそれらの代務者の赴任の際、これを妨害し又は寺院若しくは教会の財産の引継ぎをしない者」「教義上の異説を唱え又は信仰の改変を企て、訓戒を受けても改めない者」「(宗務院等の)役職員、参議又は宗会議員にして、停権以上の懲戒に処せられたときは、免職の手続きを為さずしてその職を失う。」等の規定をタテにして、住職罷免、擯斥、停権、降級等の懲戒処分にして、反管長派の宗会議員を、宗会議員、被選挙権を資格喪失にして、立候補できないようにし、宗会議員選挙では管長支持派だけが立候補し、結果として宗会を管長支持派が多数を占めるという「裏技」で決めてしまう。
1979(昭和54)年から1982(昭和57)年にかけて、日蓮正宗・創価学会の和合路線の大石寺法主・日蓮正宗宗務院と、池田大作の板本尊模刻を追及し続ける正信覚醒運動(のちの正信会)の僧侶が対立。1980年8月、宗務院は正信覚醒運動が主宰する檀徒大会の中止を命令。ところが正信覚醒運動側は檀徒大会の開催を強行。同年10月、宗務院は200人以上の僧侶を「正当な理由なく宗務院の命令に従わない者」として住職罷免、擯斥、停権、降級等の懲戒処分にした。正信会は宗会(宗会議員16名のうち正信会側は宗会議長の久保川法章と宗会議員9名)と監正会(正信会側は監正会会長の岩瀬正山と常任監正員3名)の過半数を確保しており、宗会は、「僧侶を処分せず、本尊模刻をした池田大作を処分すべき」との建議を行い、監正会は宗務院に不服の場合の最終判定を下すことから処分してはならないとの裁定を予め出していた。ところが宗務院は、宗会議長の久保川法章と宗会議員9名、監正会会長の岩瀬正山と常任監正員3名らを処分者に含め、宗規の「(宗務院等の)役職員、参議又は宗会議員にして、停権以上の懲戒に処せられたときは、免職の手続きを為さずしてその職を失う。」の規定により、宗会議長・久保川法章と宗会議員9名、監正会会長・岩瀬正山と常任監正員3名らを停権・降級の懲戒処分による「資格喪失」とし、さらに監正会員自身が関係する懲戒の案件には関われないとして、監正会は定足数を満たせず流会になったと宣告。監正会の裁決を無効として、宗務院の懲戒処分を強行した。かくして宗会議員と監正会員の補欠選挙が行われたが、「反管長派」は被選挙権を資格喪失していて立候補できず、全て「管長支持派」が立候補して当選。宗会も監正会も、反管長派多数から一転して管長支持派多数になってしまったのである。
こういうことは、世間の常識、先進国の民主主義のルールからすると、とても考えられない反民主的謀略体質である。日本の国会でも、政府を支持する与党と政府に反対する野党の政争は日常茶飯事的にあるが、政府・与党が法律を悪用して野党議員を「資格喪失」にして立候補できないようにし、野党議員が資格喪失している間に選挙を行い、国会を与党議員で選挙してしまうなどということまでは行われていない。こんなことをやっているのは、第三世界の開発途上国の軍事独裁国家である。日蓮正宗という宗教は、法主専政を押し通すためなら、開発途上国の軍事独裁国家並みの謀略を行う、極めて危険な体質を持つカルト宗教なのである。
(2016年の宗会議員選挙と大石寺法主による宗会議長認証・日蓮正宗宗務院機関誌「大日蓮」)
(2016年の監正会員選挙と大石寺法主による監正会会長認証・日蓮正宗宗務院機関誌「大日蓮」)
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