□「戒壇大本尊」偽作説から「戒壇大本尊」レプリカ説に大脱線した美濃周人氏「虚構の大教団」

 

1990年代のころ、元創価学会員・元法華講員である著述家・美濃周人氏が、「家庭内宗教戦争~お前は誰の女房だ」「謎の日蓮正宗・謎の創価学会」「日蓮正宗・創価学会・100の謎」「日蓮正宗・創価学会・謎の大暗黒史」「虚構の大教団」という名の日蓮正宗批判・創価学会批判の書籍を出版したことがあった。「アンチ日蓮正宗」管理人は、美濃周人氏が出版した日蓮正宗批判・創価学会批判の書籍を全て購入し、読了している。これらの書籍の大まかな内容を言うと、第一弾の「家庭内宗教戦争~お前は誰の女房だ」は、199012月の日蓮正宗・創価学会の「宗創戦争」開戦前後数年の美濃周人氏の実録手記のような内容。美濃周人氏が「宗創戦争」開戦前の宗創和合時代に、夫人の折伏で創価学会に入会。そして宗創戦争ポッ発で、夫婦そろって創価学会を脱会し、日蓮正宗寺院の法華講に入る。法華講では所属寺院の機関紙発行を担当。大石寺法主(日蓮正宗管長)認証の法華講支部役員である幹事に任命される。ところが機関紙の運営方針をめぐって美濃周人氏が所属寺院住職と意見が対立。住職の高慢な態度に嫌気が差して夫婦そろって法華講を退会・日蓮正宗を離檀するという物語。この本は、自身の信仰体験からの日蓮正宗批判、創価学会批判のスタンスをとっており、このスタンスはまことに的を得たもので、なかなかリアルなものがあり、私も感銘を深くして読んでいた。私はこの本は、近年まれに見る名書であると思う。

その後は、美濃周人氏は「謎の戒壇本尊」「謎の血脈」をテーマに、大石寺の「戒壇の大本尊」「血脈相承」の真実を追究する旅に出る。そして鋭くそのナゾに迫っていく。かくして自ら「戒壇の大本尊」「唯授一人血脈相承」の謎を追究するため、自分で寺院を訪ね歩き、自分で調べて検証するという方向性も、当を得たものであると思う。「謎の日蓮正宗・謎の創価学会」「日蓮正宗・創価学会・100の謎」あたりでは、身延山久遠寺、北山本門寺等の寺院を訪ね歩き、そこで見聞したこと、僧侶から聞いた話を執筆している。その後は、美濃周人氏よりも以前に日蓮正宗・創価学会を離檀・脱会した人たちが、美濃周人氏にさまざまな資料を提供。美濃周人氏も次第にそれらの資料に傾斜していくようになる。どうもこのあたりから、美濃周人氏の方向性が、あらぬ方向に脱線していったように思われる。その脱線ぶりが、最も顕著に出たのが、美濃周人氏の研究の集大成とも言うべき「虚構の大教団」である。ではどこが脱線しているのか。

まず第1に、美濃周人氏は「虚構の大教団」以前の著書では、「謎の戒壇本尊」という題名に象徴される如く、大石寺の「戒壇の大本尊」について偽作説を導き出すものとばかり思っていた。ところが美濃周人氏が「虚構の大教団」で結論づけたのは、何と「戒壇の大本尊」レプリカ説であった。これには、私も驚いた。「戒壇の大本尊」レプリカ説だけを取り上げるということは、逆説的に言うなら、「戒壇の大本尊」そのものは、日蓮の真造であることを認めることになる。美濃周人氏は、「虚構の大教団」の中で、「戒壇の大本尊」大石寺9世日有偽作説にも触れているが、全く整合性がとれていない。それだけではない。美濃周人氏が唱える「戒壇の大本尊」レプリカ説は、日蓮正宗正信会・妙真寺元信徒を自称する「ジョージ左京」なる人物が、妙真寺住職・山口法興氏の説法を根拠としたもの。つまり、1980(昭和55)年前後のころ、山口法興氏が「戒壇の大本尊」レプリカ説を唱えていたというものである。そこで「アンチ日蓮正宗」管理人は、山口法興氏の生前、この件について山口法興氏に問い糾したことがあるが、山口法興氏は「戒壇の大本尊」レプリカ説を全面的に否定していた。これでは美濃周人氏「虚構の大教団」の中の「戒壇の大本尊」レプリカ説の根拠があっけなく全て崩壊してしまうことになる。こんなお粗末な話しはない。

 

 

 

 

□美濃周人氏の著書の価値を貶めている美濃周人氏の教学的誤謬、ガセネタを元にした論法

 

さらにもう一言附言するならば、中心本尊のレプリカを寺院に祀る事自体は、比叡山延暦寺、長野善光寺、奈良・唐招提寺(鑑真像)等で、広く仏教界で行われていることであり、比叡山延暦寺、長野善光寺、奈良・唐招提寺のレプリカはいいが、大石寺のレプリカはなぜダメなのか、という論旨が全く成り立っていない。-----「アンチ日蓮正宗」の見解は、大石寺で「戒壇の大本尊」のレプリカが祀られたことはあったが、奉安殿、正本堂、奉安堂に祀られている「戒壇の大本尊」は、レプリカではなく、大石寺9世日有が偽作した「戒壇の大本尊」である、という見解である。------

第二に、「虚構の大教団」をはじめ、美濃周人氏の著書には、教学的な間違いが非常に多く、所々で目立つということがある。「虚構の大教団」では、「ジョージ左京」なる人物が美濃周人氏に提供したと称する「ガセネタ」を根拠にした「戒壇の大本尊」レプリカ説だけでなく、「二箇相承」「日興跡条条事」の偽作説を取り上げているが、この中でも、教学的に間違った論法で論じてしまっている。この美濃周人氏の間違った論法については、「アンチ日蓮正宗」管理人が、「アンチ日蓮正宗・オフィシャルブログ」の中で、指摘してきていることなので、ここでは詳細について論述しない。

美濃周人氏が著書の中で、教学的誤謬を元に論じている点については、美濃周人氏自身が、日蓮正宗教学、日蓮教学を研究してきた期間が短く、仏教教学、日蓮教学を消化しきれていない所から起因しているのではないかと考えられる。

美濃周人氏が、「ジョージ左京」なる人物が提供したとされる「ガセネタ」をはじめ、周囲の人たちから寄せられた資料や情報に、振り回されてしまっているのも、同じ原因ではないかと思われる。こう言った点は、まことに残念と言う以外にない。

第三に、「二箇相承」「日興跡条条事」偽作説に触れているのはいいとしても、教学的間違いが多いということ以外に、美濃周人氏が「百六箇抄」「本因妙抄」「本尊七箇相承」「本尊三度相伝」「産湯相承事」「日蓮本仏義」「大石寺・日蓮墓・日蓮骨」について、全く触れていない。これでは、大石寺「唯授一人血脈相承」偽作説の論旨が中途半端で終わってしまい、説得性に欠ける。

第三に、美濃周人氏が唱える「戒壇の大本尊」レプリカ説、「二箇相承」「日興跡条条事」偽作説について、「誰が、どういう動機で偽作したのか」「誰が、どういう動機でレプリカを製作したのか」について、全く言及していない。これについても、美濃周人氏の教学展開を、説得力に欠けたものにしてしまっている。美濃周人氏が、せっかく「戒壇の大本尊」「二箇相承」「日興跡条条事」偽作に切り込んだのに、美濃周人氏の数々の教学的誤謬、ガセネタを元にした論法が美濃周人氏の著書の価値を貶めてしまっており、まことに残念な結果に終わったと言わざるを得ないのである。

 

「虚構の大教団」1
 

 

(美濃周人氏の著書「虚構の大教団」)

 

謎の日蓮正宗1
 

 

(美濃周人氏の著書「謎の日蓮正宗・謎の創価学会」)

 

家庭内宗教戦争1
 

(美濃周人氏の著書「家庭内宗教戦争~お前は誰の女房だ」)