□宗会、参議会、監正会等が全く関与・介在していない日蓮正宗管長、総監、宗務院役員人事

 

20171214日付けを以て、日蓮正宗宗務院役員が任期満了となり、翌1215日付けをもって新たに日蓮正宗宗務院の宗務総監及び各部部長、副部長が大石寺68世早瀬日如法主(日蓮正宗管長・代表役員)から、主任、書記が八木日照総監から任命された。

日蓮正宗の宗制宗規によれば、総監の任期は3年であり、宗務院各部部長、副部長、主任、書記の任期は、総監の任期による。よって総監が任期途中で辞任すると、宗務院各部部長、副部長、主任、書記も一旦、辞任する。そして新しい総監が大石寺法主(管長・代表役員)から任命されると、新たに宗務院各部部長、副部長、主任、書記が任命になる。

近年は、大石寺法主(管長・代表役員)の代替わりによって、総監が次代の法主に登座するということがつづいており---大石寺65世日淳→細井日達総監が66世法主に登座、大石寺66世日達→阿部日顕総監が67世法主に登座、大石寺67世日顕→早瀬日如総監が68世法主に登座---

法主の代替わりにより、総監、宗務院各部部長、副部長、主任、書記も交代している。

今回の総監の任期は、20051215日、大石寺68世早瀬日如法主(日蓮正宗管長・代表役員)の登座に始まるもので、20171214日で3年の任期が4期満了。今回が5期目に入る。

前回の4期目では、斎藤栄順庶務部長が途中辞任し、秋元日高渉外部長が庶務部長に横滑りし、梅屋誠岳渉外部副部長が渉外部長に昇格。長倉日延財務部長の死去により、森田厚道財務部副部長が財務部長に昇格した。

今回の5期目発足では、総監、宗務院各部部長、副部長は全員再任。主任、書記もほとんどが再任されているが、一部、顔ぶれが変わっている。国島道保渉外部主任が庶務部主任に横滑り。野中信栄書記が教学部主任に昇格している。

さて再任された宗務役員の顔ぶれに一言、解説を付け加えたい。

八木日照総監とは、藤本日潤重役の実弟であり、若かりしころ、八木直道氏の養子になった。よって姓が兄弟で違っている。又、八木日照氏は、大石寺67世阿部日顕(前法主)の一番弟子。よく阿部日顕法主の弟子として、長男の阿部信彰布教部長が話題に出るが、八木日照氏のほうが阿部信彰氏よりも年長で、法臈も長い。漆畑行雄海外部長は、1945年生まれで、日蓮正宗本山・富士山妙蓮寺44代・漆畑日広貫首の長男。富士妙蓮寺と末寺6ヶ寺が日蓮正宗に合同したのが1950(昭和25)12月だから、漆畑行雄氏が生誕した時は、富士妙蓮寺は、日蓮正宗の寺院ではなかった。日蓮正宗宗務役員としては、珍しく大石寺直系門流ではない、傍系の他門流出身である。漆畑行雄氏は、次期法主候補の一人であるが、仮にこの人が大石寺法主に登座することになれば、江戸時代初期に京都要法寺門流出身の8人の法主、昭和初期のころ、宗務総監から法主に登座した、讃岐本門寺門流出身の大石寺63世秋山日満法主以来の傍系の他門流出身の法主誕生ということになる。

再任された渉外部主任・平野道益氏は、近隣住民の反対運動を押し切って日蓮正宗が建立した千葉県松戸市妙広寺の住職である

 

 

 

□日蓮正宗の非民主的法主専政の根源にあるロシア、韓国型大統領制に似た宗制宗規の体制

 

今回、新しく宗務院書記に任命されたのは、村田雄瑞氏、野村信導氏、佐藤信俊氏、三谷成賢氏、堀成寿氏、阪口成登氏、宮田明優氏、佐藤真恒氏の8人。

村田雄瑞氏は、「アンチ日蓮正宗」管理人が執筆している自叙伝「隣の創価学会員・法華講員」の、ある所に出てくる人物。又、この人は、かつてアメリカ・ワシントンDC妙宣寺住職だったが、住職在任中の2009年に火災が発生するという不祥事があった。

日蓮正宗の場合、前法主から血脈相承を受けた現法主が自動的に管長、代表役員に就任する。総監、各部部長、副部長が大石寺法主(日蓮正宗管長・代表役員)が任命し、主任、書記は総監が任命する。宗会の選出も承認も全く必要がない。管長、総監、各部部長、副部長、主任、書記の人事に、宗会はおろか参議会、監正会といった日蓮正宗僧侶の選挙で選出された機関は、全く関与していないし、何の介在もしていない。この点が、宗務行政上において、日蓮正宗と他宗派が大きく異なっている。

他宗派の例を見てみると、例えば日蓮宗のトップは管長であるが、日蓮宗の代表役員は、管長ではなく宗務総長が務める。日蓮宗の管長は、管長推戴委員会で審議の上、推戴されて就任する。管長の職務は、日蓮宗宗制の公布、寺院への親教、宗務総長や貫首、僧階等の認証を行う。

現管長は、日蓮宗総本山(祖山)身延山久遠寺・内野日法主であるが、日蓮宗管長と身延山久遠寺法主は必ずしも同一ではない。過去に、池上本門寺貫首など、他の大本山貫首が日蓮宗管長に就任した事例がある。これに対して、宗務総長は日蓮宗宗会にて選出され、管長の認証で就任する。宗務総長は、地位的には、管長に次ぐナンバー2であるが、日蓮宗の宗務行政におけるトップであり、代表役員を兼任する。

日本の宗教法人では、ナンバーワンの管長、会長が代表役員を兼任する宗教法人も数多あるが、実際はナンバー2の宗務総長、理事長が代表役員を兼任する宗教法人のほうが多い。

真宗大谷派(本山・東本願寺)、浄土真宗本願寺派(本山・西本願寺)、真宗仏光寺派(本山・仏光寺)、真宗木辺派(本山・錦織寺)、顕本法華宗、天台宗、浄土宗、曹洞宗等は、管長ではなく、宗務総長が代表役員である。創価学会、顕正会、立正佼成会も、会長ではなく、理事長が代表役員である。が、かつては創価学会も顕正会も立正佼成会も、会長が代表役員だったが、のちに会長から理事長に代表役員が交代したものである。こう言うとなんとなくわかりにくいが、外国の大統領・首相制にあてはめてみると、わかりやすくなるのではないか。

ドイツ、イタリア、オーストリア、ギリシャの大統領・首相制は、行政府のトップは首相であり、国家元首の大統領は、法律の公布、政府高官の認証など、きわめて儀礼的な権限しか持ち合わせていない。これに対して、ロシア、フランス、韓国の大統領・首相制は、国家元首の大統領が行政権を握り、行政府のトップである。首相は、行政府のトップである大統領を補佐する権限しか持っていない。つまり日蓮宗をはじめとするナンバー2の宗務総長、理事長が代表役員を兼任する宗教法人のシステムは、ドイツ、イタリア、オーストリア、ギリシャの大統領・首相制とよく似ており、日蓮正宗のナンバーワンの法主・管長が代表役員を兼任する宗教法人のシステムは、ロシア、フランス、韓国の大統領・首相制とよく似ていると言えよう。ロシア、韓国では「大統領の権限が強すぎる」ことがよく指摘されているが、ロシア、フランス、韓国型システムの定型的な事例である日蓮正宗の場合、日蓮正宗管長、代表役員を兼任する大石寺法主が強大な権力を握る「法主専政」体制になってしまっている。「ドイツ、イタリア、オーストリア、ギリシャ型」のシステムは、独裁体制に陥らないかというと、そういうわけでもない。顕正会の場合は、今も浅井昭衛会長の専政がつづいているし、創価学会の場合も、代表役員が会長から理事長に交代した後も、池田大作が一人で絶対的権力を握り続けてきていた。独裁、専政になるか、ならないかは、政治システムの問題だけではなく、その団体、組織の体質の問題のほうが大きいと言えるのではないだろうか。

日蓮正宗の場合、宗制宗規のしくみからして、「非民主的な法主専政」体制になっており、日蓮正宗の「非民主的な法主専政」体質の根源のひとつは、宗制宗規のしくみにあると言えよう。

 

15宗務院役員人事1
 

(平成302月号「大日蓮」に載っている宗務院役員人事)